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渾身のファンタジー 風の邦、星の渚 レーズスフェント興亡記

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風の邦、星の渚 上―レーズスフェント興亡記 (角川春樹事務所 ハルキ文庫)

別に現実からの逃避願望がある訳では無いのですが、最近非現実の世界を味わいたくてファンタジー小説をやたら読んでいます。この作品もその手のジャンルのおすすめとして紹介されていたので読んでみました。

あらすじ

中世時代、神聖ローマ帝国が舞台。領主である父親との対立によって辺境の領地へと追いやられた主人公の騎士ルドガーは、そこで泉の精なる「レーズ」と出会います。実はレーズは宇宙から来た地球外生命体で、はるか昔から地球に住み着いていました。新しい自由な街「レーズスフェント」を作り上げるという共通の目的のもとで意気投合した二人が、激動の時代の中、様々な問題に巻き込まれながら理想都市の実現を目指します。

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感想

SFとファンタジーの境界線

この本の感想を書くにあたって思ったのが、これはSFなのかファンタジーなのかということです。そもそもSFとファンタジーの違い自体ちゃんと理解していないので難しいのですが、この作品は少なくともいわゆる「地球外生命体」や「宇宙人」と呼ばれるものが登場しているのでSFと呼んで差し支えないとも思います。しかしサイエンスフィクションの「サイエンス」的な要素はあまり見受けられません。

中世の人間に科学力などありませんし、賢い何人かの登場人物の中には「宇宙人」の存在をなんとなく理解する者もいましたが、主人公たち人間の視点から見れば地球に根付いて暮らしている「レーズ」は泉の精であり、何か人知を超えた力を持った得体の知れない生き物なのです。このような関係性も含め、もういっそレーズが宇宙から来たことは一旦忘れて、中世の騎士が泉の精の力を借りて街を作ったりお姫様を助けたりするファンタジー小説、と呼ぶほうが個人的にはしっくりきます。

作者は本格SFを得意とする小川一水

僕は小川一水の作品はまだ2作目ですが、以前読んだ「時砂の王」はガッツリSFでした。邪馬台国の時代が主な舞台だったので、歴史小説的な要素もあるのはこの作品と似ています。SF作家と言われる彼の作品だからこそ、この話も読みながらそのうち宇宙船とか出てきていずれ舞台が宇宙になったりするのかな?と勝手な予想をしていましたが、良い意味で裏切られました。

スラスラと読める文章

ストレスなくどんどん読み進められる文章で、最後まで一気に読んでしまいました。かといって文体が軽いとかそういう意味ではなく、しっかり作りこまれているのに読みやすいという印象です。最近海外の本格SF系の翻訳ばかり読んでいたので、初めから日本人によって日本人のために書かれた文章は改めて良いものだと思いました。もちろん作者の文章力と言う部分も大きいですが。

一人の男の成長記録

主人公のルドガーは、初めは仲間といえば一緒に厄介払いされた弟と昔からの剣の師匠くらいで、ほぼ味方がいない状態でした。そこからレーズの力を借りつつも周りからの信頼を獲得し、街を一から大きくしていきます。そして10代だった彼は心身ともにたくましく成長していき、仲間の死や家族との確執にも正面から向き合います。

一方で、物語のラスボス的存在、レーズを狙うもう一つの宇宙から来た強大な敵にも立ち向かっていき、最後には立派な一人の騎士として完成します。年月をかけてルドガーの色々な意味での成長を追体験した気分になれました。

壮大なテーマとミクロな視点

宇宙からやってきた存在同士の対立という壮大な構図がありながら、物語自体は主人公の周辺、神聖ローマ帝国で展開しているので、地球規模で見れば狭い範囲で動いていきます。

作者自身も語っていますが、ルドガー周辺をフォーカスしたカメラと、世界全体を俯瞰で見たカメラ、それぞれの視点での描写が効果的に入れ替わることによって、ワイドな視界で中世を体感しながらも中心人物の軸はブレずに、当時の時代背景と人間の生活に没入することができました。

レーズだけは能力によって遠い国からやってくる黒死病(ペスト)の流行などをいち早く察知することができたりしています。この黒死病にまつわるエピソードは切なく、印象に残っている場面の一つです。

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まとめ

文章量の割にはすぐに読み終わってしまいました。それは読みやすさ、分かりやすさ、没入感など様々な要因があると思います。読書初心者にもおすすめできる小説です。

主人公のルドガーの成長を長い時間をかけて追っていくので感情移入しやすかったです。また悪役の存在が分かりやすく、劣勢な状態からそれらを打倒していく様は爽快で、非現実の世界も存分に堪能することができました。

ちなみにタイトルの「風の邦、星の渚」とは物語を読んでもなんのことなのかイマイチ分かりませんでした。レーズスフェントのことを指しているのでしょうか。

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